[]こぴぺ

634 名前: イラストに騙された名無しさん [sage] 投稿日: 2006/04/15(土) 04:08:33 id:RmahIaEJ



「ところで、助さん格さん」



 悪代官の屋敷に乗り込んだあと、ご隠居は

 ちょっと意地悪な目をして言った。



「いまから私は、ご隠居と呼ばれても返事をしない

 ことにしましたから」



『えっ』



「だって。いつまで待っても印籠を出そうとしないん

 ですから」



 言いたいことは言ったという風に、ご隠居はさっさと

 安全な場所に移ってしまった。



「ご隠居・・・」



 呼びかけても、宣言通り返事はしない。



「切り殺されたくなかったら、ちゃんと呼びなさい」



 わかってるでしょう、って目つきですましている。

 助さん格さんは、ぽりぽりとこめかみを掻いた。

 いつもワンパターンで、むしょうに照れくさい。



「まったく、困った年寄りだ・・・」



「何か言いましたかな?」



 こうなったら、絶対言わせるつもりらしい。

 助さん格さんは観念して周りを見渡した。

 幸い、悪党しか見ていなかった。



「ええーい!静まれっ静まれーい!!」



「この紋所が目に入らぬかっ!」



「こちらにおわす御方をどなたと心得る。恐れ多くも

 先の副将軍、水戸光圀公にあらせられるぞ!」



「一同の者、ご老公の御前である。頭が高いっ!

 控えおろぉーうっ!!」



 悪代官の屋敷の庭先で、助さん格さんの声は妙に

 はっきりと響いた。

 すると好々爺のようなご老公は、



 「かっかっかっ」



 と満足そうに笑ったのであった。